交通事故に関するコラム

個人事業主の休業損害② 交通事故による休業損害

1. 個人事業主の休業損害の算定方法

個人事業主の場合、給与所得者とは異なり、一日当たりの収入が決められている訳ではなく、また、休業を証明してくれる雇い主がいる訳でもありません。このため、交通事故による休業によって収入が減少したことを証明する必要があります。

主な算定方法としては、以下の2つの方法があります。

 

2-1.交通事故以前と事故後の確定申告を比較する方法

まず、交通事故以前と事故後の確定申告を比較することにより、交通事故を契機にした収入の減少を明らかにする方法があります。
この方法は、個人事業主の一番の収入資料である確定申告書を基礎として休業損害を証明しますので、最も基本的な証明方法と説明されています。
もっともこの方法には以下に述べるように問題も多く、実際には証明が難しいことが多いです。
まず事業所得はさまざまな理由で上下するのが普通です。このため交通事故後に減収があったとしても、これが事故によるものとは限りません。交通事故と事故後の減収との因果関係が、ほとんどの事案で問題となります。
また、交通事故から症状固定までが複数年度に渡る場合、年度の途中からの休業の場合など、事故前後の比較自体が困難な場合もあります。
その他、交通事故後、被害者が休業を余儀なくされたものの、個人の努力により減収を押さえた場合などは、評価が難しいところです。

 

2-2.交通事故以前の収入を基に一日あたりの基礎収入を計算する方法

もう一つの方法として、給与所得者と同様に、交通事故以前の収入(確定申告)額を基礎として1日あたりの収入を計算し、これに休業日数を掛けて、休業損害を計算する方法があります。
この方法は計算方法が明確であり、休業期間を損害に反映できるメリットがあります。
しかし、この計算では休業日数を明らかにする必要がありますが、個人事業主は休業日数を明確に証明する方法が乏しいという問題があります。また実際に生じた減収額と差が生じるため、休業損害の相当性が問題になります。

3.まとめ

以上の通り、個人事業主の休業損害の算定では、いずれの方法を採っても交通事故との因果関係や損害額の相当性が問題となります。  
このため実際の実務では、上記2つのいずれの方法を採るにせよ、請求額の合理性・相当性を補充する必要があります。
保険会社側と争いになった場合には、確定申告や財務資料などから、休業損害の相当性を具体的に証明することが不可欠となります。

 

文責 プロスト法律事務所 弁護士 林 征人

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