「主婦」が交通事故にあった場合(その2)
前回のコラムでは、一般的な「家事従事者」についてご説明しました。
今回のコラムでは「家事従事者」についてより具体的にご説明します。
有職主婦(兼業主婦)の場合
有職主婦の場合も、専業主婦と同様に家事従事者に当たります。
保険会社から被害者に提示された示談金の内訳を見ると、兼業主婦の場合にはパートタイマーの収入だけを基礎とされている場合が多くありますが、家事労働者としての請求が可能です。
基礎収入は、被害者の金銭収入額が女性平均賃金額より高い場合は実収入額、低い場合は女性平均賃金額を採用します。
家事従事者として請求すれば、基礎収入や休業の必要性の見直しにより、大幅に休業損害・逸失利益が増額することがあります。
男性の家事従事者の場合
性別を問わず、家族のために家事労働をしていれば、家事従事者に当たります。
ここでいう家事労働は一時的な手伝いでは足りず、家事を継続的に行なっている必要があります。
共働きで家事を分担している場合などは、分担する家事の内容に応じて基礎収入が認定されます。
男性の家事従事者の場合にも、基礎収入額は男性平均賃金ではなく、女性平均賃金を参考として認定されます。
ただし、現在でも男性が中心となって家事を行なっている例は多くはないことから、保険会社は容易には男性の家事従事者性を認めず、強く争ってくる傾向にあります。
このため被害者側としては、家族構成・家事の分担・生活状況・就労状況・扶養関係等の具体的・個別的事情を明らかにし、実際に被害者が家事を取り仕切っていることを主張・立証していく必要があります。
高齢者が子どもと同居している場合
年齢を問わず、実際に家族のために家事労働をしていれば家事従事者に当たります。
ただし高齢者の場合、家事労働の程度が軽いことが多いですので、一般に年齢別平均賃金が採用され、かなり高齢の方については平均賃金を何割か減額した額が採用される傾向にあります。
もちろん高齢者の方でも、若い主婦と同様に家事全般を取り仕切っている方もいらっしゃいますので、年齢だけで一律に減額されるわけではありません。
被害者側としては、被害者の年齢・健康状態・家族構成・家事の分担状況・家事内容及び分量等の具体的事情を主張し、妥当な家事労働の評価を主張することになります。
別居の家族のための家事労働
前回のコラムでご説明したとおり、家事労働は「家族のため」にする必要がありますので、一人暮らしの家事の場合は自ら生活していくための日常的活動であり、金銭的には評価されないのが原則です。
もっとも、別居の家族を介護している場合など、時々の手伝いではなく、継続的に家事を行なっている場合であれば、家事労働として認められる場合があります。
さいごに
以上のとおり、家事従事者の逸失利益については、現に家族のために従事している家事労働の内容・程度・実態によって判断されます。
このため、一律の基準で決まるものではなく、裁判でも事案によって判断が分かれるところです。
妥当な評価を受けるためには、事案に応じた考慮要素の検討や十分な立証準備が不可欠となります。
弁護士 林 征人
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