民法改正による交通事故賠償請求への影響 ②法定利率・遅延損害金の見直し
2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が、2020年4月1日から施行されます。
今回は②法定利率の見直しについてご説明します。
法定利率の見直しについては、2020年4月1日以降の交通事故が対象となります。
法定利率・遅延損害金の見直し
現行民法の法定利率は年5%の固定性を採用していましたが、現状、市場金利との乖離が大きいため、改正民法では法定利率の変動制が採用されます。
改正民法施行当初の法定利率は3%に変更されますが、この法定利率は3年毎に見直しが予定されています。
交通事故損害賠償請求の遅延損害金については、法定利率によるため、民法改正後は変動制が採用されます。
今後は、法定利率の見直しにより、交通事故発生時期により遅延損害金が変わりうるため、交通事故実務に大きな影響を及ぼします。
中間利息控除について
法定利率の見直しが交通事故実務に与える影響のうち、最も影響が大きいと思われるのが中間利息控除の問題です。
交通事故の損害賠償請求では、後遺障害逸失利益(後遺障害が残ったために、労働能力が喪失し、将来の収入が減少した損害)や将来介護費など、将来に受け取るべきお金を前払して貰う請求が含まれています。
先に受け取ったお金は、銀行や郵便局に預けたりすることにより、利息を得ることができます。
中間利息控除とは、こうした利息を考慮して、将来に渡って発生するはずの利息を差し引くことを言います。
交通事故実務では、逸失利益や将来介護費の計算に当たって、対象の年数から中間利息を控除した「ライプニッツ係数」を利用します。
改正民法施行当初は法定利率が3%になりますので、ライプニッツ係数が大きく変わります。
法定利率3%で計算すると、中間利息控除の割合が小さくなるため、計算される損害賠償額は大きくなります。特に、労働能力喪失期間や将来介護費の期間が長期に渡る場合には、従来の基準に比べて、損害賠償額の高額化が見込まれます。
法定利率変更による影響 計算例
例えば、事故当時22歳の被害者が、基礎収入500万円、67歳までの45年間、56%の労働能力喪失(後遺障害7級相当)があった場合、計算の違いだけで、後遺障害逸失利益には以下のような差が出ます。
A、民法改正前 法定利率5%
法定利率5% 45年間のライプニッツ係数=17.7740
500万円×56%×17.7740=4976万7200円
B、民法改正後 法定利率3%
法定利率3% 45年間のライプニッツ係数=24.5187
500万円×56%×24.5187=6865万2360円
法定利率の見直しによる中間利息控除の減少の影響は大きく、遅延損害金が3%となることを考えても、損害賠償額が大きくなる例は多くなってくるものと考えられています。
それだけに、高額事例・若年者の例では、後遺障害や損害額の争いが一層激しくなるものと思われます。
文責 プロスト法律事務所 弁護士 林 征人
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